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あるケースでの感覚入力のお話

ちょっと前に、PT.の先生がお越しになったのです。

ちょっと自費リハビリに関心がおありだった様で、色々お話しをさせて頂きました。

話の中で、今「セラピースペースながしま」をご利用中の方の担当をされておられたことが解ったので、先日、その方の同意を得て立位の姿勢と座位の姿勢の写真をPT.の先生に送らせていただきました。

とっても面白がられて、手指の動きを引き出したことも含め、どういう風にしたのかというお問い合わせがありました。

嬉しいですね!


大雑把にいって、脳の損傷があると、それが何処であったとしても、情報処理としての身体図式は変化します。

手も足も二本ずつあって、大きな意味での構造は変化がないにもかかわらず、麻痺側の体幹や手足などの知覚が困難となります。


図では、頭頂葉と側頭葉の連合野が中心に記載してありますが、前頭葉と頭頂−側頭連合野は上縦束などによって結びついていて、常に運動出力情報のエファレンスコピーが側頭頭頂連合野にも送られていて、運動出力プログラムとその結果が照合される様になっていますので、前頭葉も当然関連性があることになります。そういった視点は、体性感覚も基底核のループに組み込まれていると考えて良いものと思っています。


変化してしまった、或いは弱くなった麻痺側の身体図式に関わる情報処理によって、麻痺側上下肢が「脳が世界を知るための道具」としての役割を果たしにくくなると思うのですね。

脳が世界を知るための道具だと認識さえすればなにかしらの出力情報とつなげる様な回路を開発するのではないかと推測をしているわけです。


運動の出力が起きる場合は、それを利用して手という道具の特性を脳に届けることが出来るかも知れません。しかし、脳損傷によって起きる様々な問題で、麻痺側上下肢の出力情報は弱化しているか、協調性のとれないものとなっている事が多いわけです。


すると感覚としてどの様になるかということを考えてみると、一定の法則性にのっとって入力される情報というわけにはならなそうですよね。ある時は硬くなって身体を固定しようとしていたり。そう思って体重を負荷してみたらまるで支えにならなかったり。何かを取ろうとして手を伸ばす様な出力情報を送ろうとしても或いは、送っても手は動かず。だけど、立って歩いている時などに動かずにそっと伸びておいて欲しいのに勝手に手が持ち上がって動いてくるとか。


パソコンのキーボードに例えると、”a”のキーを押したのに、a,f,p,k,g,...等、勝手に様々な文字が入力されていて、しかも、ちょっと触れただけでたくさん入力されたり、しばらく押し続けないと入力されなかったり。なんの法則性も見いだせないキーボードだったら、パソコンも上手く使えないですよね。そんなキーボード使おうとする人はおられないでしょう。


手足は壊れているわけでは無いですが、脳にとってみたら、そんな不安定な情報を送ってくる麻痺側は使おうとすることは無いでしょう。


ですので、しっかり、感覚に意味を持たせる必要があるのだろうと思うのです。それは、麻痺側から、世界という環境を一定の法則性に基づいた情報として脳にとどけるものであって、それが脳にとって意味のある感覚情報となるのでは無いかと。そう考えるわけです。


ちなみに、1年前、はじめてお目にかかった頃の立位姿勢はこんな感じ・・・


左の手は、屈曲して身体にひっついています。立位はほぼ右足に重心を乗せて、右肩は伸展していて強い同時収縮を起こしていました。腰部は右の代償的な過活動によって過剰に前弯を強めて身体をねじるようにしながら立位姿勢を保持していて、下部体幹前面は引き延ばされ、両側ともに筋活動が乏しい印象の姿勢でした。

この状態で歩かれていたわけです。

大変そうですよね。

左手足はほぼ、身体に付属しているだけで、邪魔にならないように配置され、下肢も歩行時は床についてさえいれば、それで右足で跳ねるように移動されていました。

「そりゃしんどいわ・・・」と言った印象です。


麻痺側上肢の筋自体も短縮気味に高緊張になっているところや低緊張の所が見られていて、肩甲骨の内転筋群、挙上筋群は高緊張で伸びにくく、三角筋前部繊維や中部繊維は低緊張、上腕三頭筋は低緊張、上腕二頭筋や前腕から手指に至る屈筋群は高緊張・・・・といった具合でしょうか。

筋周膜の中には筋紡錘が存在しています。筋の張力が過剰なところや張力の低い部分は、筋周膜の動きもその特長にそったものになると推測出来ますので、その中に存在している筋紡錘も情報としては適切なものを中枢に返しているわけでは無さそうに思います。


ですので、身体を動かす際にそういった事に配慮しながら姿勢を変えたり運動を行ったりすることになります。


先日行ったアプローチで選択した姿勢は麻痺側を下にした側臥位です。


以前資料に使った写真ですので、左片麻痺の例では無いですが・・・(^_^;)

どうぞご自身の脳の中で修正しながら見てくださいね。

結構ダイナミックな姿勢の写真ではありますが最初っからここまで持って行ってはいないです。

最初は、まず麻痺側を下にした側臥位になる〜麻痺側上肢、体幹、下肢にじっくり感覚をいれる〜感覚が入力されるように少しずつ繰り返し側臥位に近づいていくようにします。

サメーションですね。

この時、脳にとって感覚が適切なものでは無いと、脳は麻痺側からの支持規定面の感覚情報を、世界を知るための有用な情報として利用しません。そうなると、上にある非麻痺側は過活動を起こしてなんとか世界を知ろうとしてしまうだろうと予想出来ますので、上にある非麻痺側の活動が充分リラックスして麻痺側を下にした側臥位に移行出来るようになるのがりそうです。

その上でさらに、非麻痺側の代償性過活動による筋の硬さなどを取るような作業を行います。


そしたら、上にある非麻痺側上肢、或いは下肢、もしくは上下肢をプレーシングさせて動かすような課題に移ります。別に、なにかを取るとかでも良いですし、ダイナミックに振り回してみるとかものを投げるとか。動く範囲やスピードはその人に合わせることになりますが、この方は比較的単純にちょっと動かす程度でおこないました。


この時期待するのは、左右の協調された役割分担です。

これも以前資料に使った写真です。はさみで紙を切るという場面ですが、この時の脳の情報処理はこのぐらいのことが言えるのでは無いかというもので、右手ではさみを使おうとしたとき、左脳が働くのですが、左脳の運動前皮質は右脳の基底核に投射しているので、右脳の運動前野の基底核ループに関わって姿勢や運動を制御することになるのでは無いかといったお話です。


で、側臥位の場面では上になった右手を動かすのですが、左脳の情報処理は、右脳に伝わって、手足の動きと合わせて左上下肢は重心を制御しようとする反応が出るというのが側臥位の場面で私が期待したところなのです。

これを、Limb movement against trunk. Trunk movement against limb.といったりします。


上にある右上肢の動きに合わせて、した側の肩甲帯が内外転をしながら適切な位置が保てるように、特に短縮のある肩甲骨内転筋,挙上筋が伸びやすいように肩甲骨に手を当てつつ、三角筋の緊張が弱化している部分などは確り包み込むようにグリップして動きに合わせた筋の動きがおきるようにして、筋紡錘からの情報と皮膚からの情報が協調されたものになるように操作しました。

上手くいくと、右上下肢はさらにリラックスして動きますし、左上肢も筋出力がおきて応答しているのをセラピストが感じることが出来たりします。すると、左手もさらに緩みやすくなっていくので、その時点で、左側からのBOSの情報は、脳にとってある程度意味のあるものだと判断して行きます。

あとは、その感覚を拡大するように上の右上肢の動きをユックリ大きくしながら、前に突き出す際には上腕〜肘〜前腕〜手指と接触する圧が変化するように、後ろに行くときは逆ですね。

そんな感じでアプローチをしていたのです。


で、指の動きや起き上がりなどの姿勢変換へといった感じ。


その時綺麗な姿勢で立っておられたので、写真を撮らせていただきました。



この写真を、以前担当されていたPTの先生に気に入っていただけたようなのです。

で、最初に書いたように少し説明をしようと思いまして。


PTの先生からいただいたご連絡の中に、「とっても刺激を受けて、臨床でもいつも以上に感覚入力を丁寧に行ったら色々良い変化が出ました」といった記載があって、私もなにかお役に立てたようでとても嬉しかったのです。

(^_^)v


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