Nagashima Kazuhiro

4月3日5 分

Never bend your head

最終更新: 4月4日

「セラピースペースながしま」に久しぶりに来られたかたなのですが、ちょっと鬱っぽくて病院でお薬をもらっている。最近便秘気味で、さらに最近、血糖値がちょっと高めであると言われて色々気になってしまって、夜も眠りにくいとのお話でした。

鬱的と云われる脳の情報処理というのは、おそらく報酬系の問題(これがどの様な問題かというのが問題かも知れませんけれど)で、通常取るべき行動や運動の選択が基底核ループで選択されなくなった様な状態、これはふたつの状態があると思うのですが、何もしたくないという行動選択が起きている場合と、そもそも基底核ループ自体が働かずに何も行動を起こしていない場合だと思うのです。

専門家に言わせるともっと色々あるとは思いますけれど。

報酬系であるドーパミンから基底核の働きを見てみます。

やはり、基底核が過剰にターゲットシステムを抑制してしまって、運動が起きにくい状態になることが解りますね。

来られたかたは、「なまけ病で。」とおっしゃっておられましたが、きちんと否定して、脳の情報処理上の問題だと思われることをお話ししました。

便秘などの症状についてです。

図を見てもらうと、自律神経系と運動機能が回路的に結びついているのがわかると思います。

自律神経系の基盤となるシステムは島皮質を介して身体図式情報や運動/感覚に影響を与えているようですが、同時に身体図式や感覚/運動は自律神経系に影響を与えているのが解ると思います。

つまり、運動や行動が適正に選択されていない状態というのは自律神経系も適正に働きにくい状態であると言えるでしょう。

おそらく便秘などの内蔵機の不調はこういった関連性が影響しているものと思います。

とすると、運動に関わる情報処理が適正に行われることが結構介入のきっかけになるのかも知れないと考えられます。と云うか、考えたのですね。

さて、そうすると姿勢と運動の関連性です。

報酬系である、ドーパミンの働きが悪いとすると・・・

基底核の働きが低下することで、結果的に前庭脊髄路による強力な伸展活動がおこせなくなり、抑制性脊髄路の働きも低下することで、興奮性網様体脊髄路が興奮しやすい状態になる訳です。

パーキンソン病などでは、ここで動きを起こそうとするので、皮質網様体路から興奮性網様体路が働くことになりますので、抗重力性を失った共収縮を起こしてしまうわけですが、鬱の様な状態においては、高次運動野自体もきちんと働いていない〜行動を起こそうとしない状態ですから、高次運動野からの網様体投射もそこまで起きているわけではないことが推測できるので、ただ抗重力性を失い、共収縮も起こしにくい状態が考えられるのだろうと思います。

姿勢は抗重力性を失いますので、頭頸部のアライメントは崩れていくことになりますよね。

全身が屈曲姿勢を示していると頭部は前方に突出します。すると、重たい頭部を支えるために、頚部の伸筋は過剰に働き、また胸鎖乳突筋は短縮してしまいます。実際、来られたかたの頚部から肩にかけては、筋の粘弾性が乏しくなって硬く、ご本人も肩こりを訴えられていました。

すると・・・

大きな内頸静脈は頚部筋群によって圧迫されている可能性が高くなります。

おそらくそれは強いものではありませんが、自然な静脈血液の流れに抵抗を与えることになります。

すると、脳の血液が外部に出にくい状態ですので、動脈も新しい血液を脳に届けることが少ししにくくなるわけですよね。

すると、脳の栄養状態や、脳の神経細胞外環境を支えている間質液の交換も障害される可能性が出てきます。

つまり、脳の栄養状態や脳の神経細胞外環境が悪くなることも充分考えられるという事になります。

悪循環ですね。

と云うことで、私がアプローチすべきと考えたのは、まず頚部のアライメントを修正していくこと。

その後は、姿勢アライメントを整えつつ、立位姿勢に介入して前庭脊髄路の働きを増す様にバランスボードなどの道具を使いながら抗重力性を少しでも高くしていく様にしていくこと。

つまり、歩きやすい身体を構築することを一生懸命行ったわけです。

その後に歩行に介入し、いつもより歩きやすいと言っていただける様に頑張ったのです。

今後、特別目標など設定するのではなく、出来る範囲で歩行の機会を増やしていくことで、基底核関連と思われる鬱的な症状、自律神経系の問題である内蔵機能の問題、運動機会が増えることで血糖値などの問題や、将来的には身体が疲れるぐらいの活動を行えば脳は休息を求めてくるはずなので、睡眠なども改善する可能性が在ることを説明して、歩く機会だけは増やして欲しいことをお伝えしました。

歩くと言っても、屈曲姿勢で歩いていただいては効果が出にくくなると思われるので、

できるだけうつむかないで欲しいこと。

頭を確り高い位置に保持して欲しいこと。

真っ直ぐ前を向いて欲しいこと。

という3つの事を出来るだけ守って欲しいというお話しをさせていただいたのです。

良くなるといいですね。

(*^_^*)

追記:あ、今ネットで検索していたら、うつ病はモノアミン仮説があって、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどが関与しているとされているようですね。モノアミン仮説、知っていたのに忘れてた。(^_^;)

セロトニンが減少していると、興奮性網様体脊髄路も働かないですから、全体的に低緊張で抗重力性を失ってしまいますね。γ運動ニューロンも活動性を落とすはずですから腱反射なども低下している可能性が在りますね。

また、ノルアドレナリンはアストロサイトによるグリンファティックシステムにも関与しているはずですから、正常な液交換システムもあまり期待できないという事になるのかも知れません。

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